ゆらめく資産の記録

インフレ、不況、利上げに備える

経済については素人なので以下はほぼ感覚で書くし、感覚で資産を動かしている。

インフレ、不況、そして利上げへ

主に欧州を始めとして燃料高が懸念されている。これは直接的には脱炭素政策の「成果」だけど、インフレと相まってなかなか厳しい状況らしい。飛行機の利用を避けてヨットで海を渡るグレタさんも今ごろは暖房のない冬に凍えて痛みを分かち合っていることだろう。

インフレの種はずっと蒔き続けられてきた。利下げしすぎて欧州と日本は史上初のマイナス金利になり、米国もほぼゼロだ。それでも足りずにコロナを口実にしてさらに現金をばら撒いた。普通ここまでやれば世の中の現金はじゃぶじゃぶになり、通貨の信用が毀損されてインフレになるはずだが、欧米のインフレ率は2%ほどに収まっている。

余ったお金はどこに行ったのか。例えば日本だと、現預金(マネーストック)や企業の内部留保などの無リスク資産として死蔵されるか、税として国が取り上げるか、不動産(東京のマンション価格は10年ほど値上がりしつづけている)や株などに向かうだけで、生活に直結するような経済活動にはあまり流れなかった。米国でのキャッシュの向かい先は主に株で、米国株が強い伸びなのもこれだろう。資産バブルという声も聞かれるほど高値かつ右肩上がりで推移し続けている。

モノの需要が伸びて、モノを作るためのモノの価格も上がることで物価は上がる(デマンドプル型インフレ)が健全とされるが、モノの需要はあまり伸びていない。ソシャゲのガチャなどにも向かったものの、ニューエコノミーと呼ばれるこれらは物価に直接寄与しない。原価と呼べるものは主に人件費であり、米国ではそれでIT関連の人件費(=給与)が高騰している。

今回は原油価格の高騰という形でコストプッシュ型のインフレが起きていると言われている。それなりに蓄えてきた人や稼いできた人にとっては「ちょっと痛い」程度のものだろうが、貧困層にとってはかなりの痛手になる。ヨーロッパの貧困層は暖房のない冬を過ごす恐怖と向き合っていて、フランスではインフレ給付金という語義矛盾をきたしてそうな施策を取った。政府はまだまだ現金をばら撒いていく。

一方で「サプライチェーンの問題」と説明される物資不足がしばしば見られる。コロナで労働者が減ったり国境が封鎖されたりしたせいで供給量が減っていたところにリオープンで旺盛な需要が復活したら、それはそうなる。なかでも半導体不足はずっと続いていて、各国政府はその深刻さを見てとり自国内での供給体制を強化しようと動いている。半導体はニューエコノミーの生命線でもあり、また家電や自動車などでも幅広く使われるが、不足しているのは半導体だけだろうか。半導体がボトルネックなら、それが解消されれば今度は例えば金属などが足りないと言われるんじゃないのか。

原油は枯渇しているわけではなく増産か減産かを人間が決めているだけで、供給量が足りなければ末端価格は上がる。増産と減産の判断は主に先物価格や需要の先読みから行われるが、2020年にWTI原油先物がマイナス価格になったこともあって、おそらくしばらくは慎重な見方がされるだろう。慎重というのはつまり供給を絞るということだ。南アフリカで新しいコロナ変異株が発見されたことで経済活動がまた縮こまり、原油需要が減ると見られればなおさらだろう。さらに脱炭素政策、つまりは脱化石燃料ということだが、この運動が強まれば強まるほど需要も下がる。米国はかっこよく脱炭素!と宣言した手前、いまさら増産に舵を切るのがみっともないのもあり、各国に備蓄を吐き出させてお茶を濁そうとしている。他の産油国にとっても脱炭素運動は減産を促すものでしかない。つまり需要がどうなるかはともかく、供給はほぼ間違いなく減るはずだ。需要が思わぬ要因で膨らめば原油価格は当然上がる。

原油価格の高騰はほぼすべてのコモディティに影響が及ぶ。それはつまり全面的な物価高を呼ぶ。また「サプライチェーンの問題」によっても品不足からの値上がりはある。供給の改善についてクリアな見通しは今のところ存在しないように見える。

物価高はコストプッシュ型のインフレを引き起こす。スタグフレーションのせいで、金融緩和をしてもキャッシュは末端まで及ばず金融資産や一部の人件費などに流れるだけで終わる。国民の預金口座に直接現金を押し付けてようやく届くことになるが、それはそれでさらなるインフレを招く。また米国のように働くよりも給付金をもらったほうが得だと考え、困窮を訴えて給付金を出させようと考える国民が増えれば、生産者たる労働者も不足する。生産者が減れば当然ながらモノであれサービスであれ供給が減るため、物資は不足してさらに価格は上がる方向に傾く。

この状況で利上げすればどうなるだろうか。インフレが進めばFRBは利上げせざるを得なくなるが、じゃぶじゃぶの現金が株などに向かったのと逆のことが起きるだけに思える。株や不動産は暴落し、物価にはさほど影響せず、貧民は給付金をねだり続け、暴落から逃げ遅れた人もその列に加わる。「ちょっと痛い」で済んでいた価格高騰が確かな痛みになるかもしれない。

米ドルが下がるかどうかはなんとも言えない。他通貨との相対比較で決まるが、ユーロも円もばらまいているため、まだ金利を上げる余地のあるドルのほうがマシとなるかもしれないし、そんなことは構わずに貨幣価値が暴落するかもしれない。

備え

というようなことを最近考えていた。現金はインフレによって毀損しそうだし、株も危ういし、債券は現金よりも魅力がないし、不動産もキャピタルゲインは狙えるかもしれないが気軽に買えるREITは利回りで決まるので微妙だ。となればゴールドだけど、今年のコモディティはいろんなものがいろんな値動きをしていて、ゴールドだけに絞るのもどうかと思う。

教科書的にざっくりまとめると下の表のようになる(はず)。

資産クラス/リスク インフレ 利上げ 不況 備考
現金 ↓↓ - - 利上げの直接の影響は受けない。不況時に現金があっても増えるわけではない
債券 ↓↓ ↓↓ 不況「だけ」なら相対的に有利だがジャンク債などデフォルトリスクが高いのは別。
不動産(REIT) ↓↓ ここに書いた3つのリスクに対してだけなら債券とほぼ同じはず。REITの種類でシナリオは変わる(例えば住宅リートは不況の影響が少ない)
↑↑ インフレ「だけ」なら株価にはプラスになる。利上げの影響は業種によりそうだけど一般的には不利
コモディティ - インフレで見た目の価格は上がるけど、実質的には価値が下がらない現金のようなもの。不況の影響は銘柄による?

今はインフレかつ不況で、米国(米ドル)は利上げに向かっている。

普段なら現金にしておけば無リスク資産で安全といえるけど、インフレを考慮するならあんまり持ちたくはない。かといって債券もREITも面白くはない。

残るは株とコモディティだけど、株価はここ数年ずっと高値と言われ続けており、何かのショックで崩落するリスクはすでに充分高い。完全撤退するほどではないけど、オールインは果敢すぎる。

というわけで消去法的にコモディティの割合を増やしていってる。コモディティにもインデックスがあり、原油や金属や農産物などをバスケットにしたETFや投信がある。SBIでは $GSG も $DBC も購入できなかったのでeMAXISコモディティなどの投信しか選択肢がなかった。個別のコモディティ銘柄を手掛けるほど知識も自信もない。

上の表ではざっくりしすぎているので、細かく見ればいいものがあるかもしれない。例えば債券でも物価連動債なら物価高(=インフレ)に耐性があるし、株でも銘柄によっては妙味があるかもしれない。現金といっても日本円か米ドルかユーロかスイスフランかトルコリラかでも変わってくるだろう。引き続き細かく見ていって対策していきたい。